poetry

Posted on 2013-05-01
言葉の鳥

空を割って飛び込んできた鳥たちが、
湖面に近づき、
次々と言葉に変わっていった。

言葉は湖の表面ギリギリを滑空し、
跳ねかえるしぶきを浴びて
笑っている。

私は言葉をつかまえようとした。

けれど、
あまりにも早く、
つるりとして、
形を自在に変えるものだから、
つかんでも
手のすきまから逃げていく。

かと思うと、
流し目を送り、
やわらかな指で
私の耳をなでていく。

つかんだぞ!

私は手の中に言葉を閉じ込めた。
その瞬間に言葉は鳥に戻り、
首を小さくかしげ
悲しげな目を向けた。
だから、私は手をゆるめてしまった。

鳥は悠然と羽を広げ、
空高く舞い上がり、
ふるさとへと戻っていく。

口を半開きにして立ち尽くす私。

手のひらに残った、鳥の羽1枚。

手で包み込み、
鳥の姿をまぶたの裏に思い描く。


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