poetry

Posted on 2013-06-26
私たちは笑っていた

私たちは笑っていた。

陽だまりの中、
あなたは光を背中から受けて。

ギターをおもちゃのように弾き、
高らかに歌い、口笛を吹く。

あなたは笑う。見つめる。おどける。
海風が2人をなでていく。
あなたはうつむく。触れる。口づける。
太陽が2人を眺めている。
あなたは横になる。眠る。夢を見る。
砂浜が2人を抱きしめる。

あなたとわたし。
白い部屋に暮らし、
焼きたてのパンを食べ、
ワインを飲み、
よく笑い、喜び、楽しんだ。
 

けれど、あるとき、
兆しが見えるとあなたは言った。
愛するとは何だろうと私は聞いた。
答えはタバコの煙の中。

食べてはいるけれど、消化できない日々。
ベッドには入るけれど、眠れない日々。
キスは交わすけれど、心が通わない日々。

旅立つときが来てしまったんだ。

おろしたての靴を履いて、
リュックに新しい地図を入れて、
あなたは玄関に立つ。

そして、振り返る。

冷静な目が、
ほんの1ミリ細くなった。
もう2度と会えないことの最後の確認。

淡々といつものように
もはや戻らぬ家を出る。

新しい道は光であふれている。
いつもの部屋も光であふれている。

私たちは笑っていた。

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