poetry
Posted on 2013-06-20
老木に、もはや記憶はない
老木に、もはや記憶はない。
枯葉として落としてしまったからだ。
ただ、幹の穴に手をそっと差し入れてみよ。
樹液の結晶が息を吹き返すかもしれない。
新芽に、もはや希望はない。
枝の中に置いてきてしまったからだ。
ただ、薄くやわらかい葉先に口づけしてみよ。
咲きたかった花を思い出すかもしれない。
種子に、もはや家族はない。
母木はすでに別の子どもを育てているからだ。
ただ、湿り気のある土に放ってみよ。
母に似た大らかな木になるかもしれない。
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