poetry
Posted on 2013-03-08
あなたは大樹
あなたは大樹だった。
腕を広げて抱きついて、
胸に耳を当てると、
トクトクトクと鼓動が聞こえた。
辛いことがあると、
あなたに寄りかかった。
大きく安らげる木陰を作ってくれ、
強い日差しから守ってくれた。
喜ばしいことがあると、
あなたに報告しにいった。
風に吹かれて葉っぱたちが
サワサワと音楽を奏でた。
迷っていることがあると、
あなたに相談しにいった。
静かに耳を傾けて、
沈黙の底で手をつなぎ合ってくれた。
あなたは
よき聞き手であり、
よき語り手だった。
しかし、時は過ぎ、季節は変わる。
もう会いに行かなくなって、
どのくらい経つだろうか。
気がつけば、
記憶の種が私の心に蒔かれ、
あなたと私が混じりあった新芽が
育ち始めていた。
Related Posts
Comment