poetry

Posted on 2013-06-05
貝殻の告白

熱い風に吹かれて、
南の島で少女が貝殻を拾い集める。
貝殻はかつてのすみか。
家主は去ってしまったが、
死んだ言葉と記憶を無数に積み重ねている。

少女は手の平いっぱいに貝殻を抱え、
ある時は三日月に腰掛けながら、
ある時は雲の電車を乗り継いで、
ある時は稲妻の光をすべってきて、
東京までやってきた。

少女は少年の前で貝殻を広げる。
貝殻は人見知り。
伏し目で沈黙を守っている。

少女がひとつひとつ、丁寧になでてやると
貝殻たちは口々に
かつて
大笑いしたこと、
涙を流したこと、
死にかけたこと、
踏みとどまってきたこと、
恋に振り回されたことを話し出す。

そして最後に
赤い貝が少年に告げた。
あなたに会いたかったのだ、と。


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